遺言書の作成は誰に頼むべき?

 遺言書作成の専門家は、①行政書士、②弁護士、③司法書士、④税理士などがあります。それぞれに特徴があり、さらに同じ専門職の中でも費用は大きく変わってきます。
 どの専門家も遺言書作成に携わっているとは限りません。まったく遺言相続業務を取り扱っていない専門家も大勢います。

 しかし、遺言書作成に精通している専門家に相談すれば、おそらく遺言書の種類や作成方法などを細かく教えてくれるでしょう。

 ここでは、各専門家の特徴を説明します。

①行政書士に依頼する

 行政書士は、あまり聞くことのない職業だと思いますが、行政書士法に「権利義務又は事実証明に関する書類を作成することを業とする(第一条の2抜粋)」とされているように、書類作成の専門家と言えます。ちなみに、その他の行政書士の仕事は、「行政書士って何?どんな仕事をしているの?」をご参照ください。

 遺言書は、厳密には自分で作成しなければなりませんので、行政書士に限らず、遺言書の作成のサポートが主な仕事になります。

 行政書士は、弁護士のように相続人間の紛争を解決することも、司法書士のように登記申請をすることも、税理士のように税申告をすることも出来ません。ただし、一般的にその分だけ他の専門家に依頼するよりも安い値段で遺言書作成を含む相続サポートを提供しています。

 相続人の間で大きなトラブルは起きそうにない、不動産を所有していない、相続財産が多くなく相続税の基礎控除内に収まるが、遺言書を作成しておきたいという方は、行政書士に依頼すると良いでしょう。
 なお、相続人の間のトラブルも話し合いでなんとかなることも多いですし、不動産の相続登記は司法書士に依頼せずとも相続人が申請することが出来ます。また、行政書士を遺言執行者として指定すれば、遺言執行者が相続登記申請をすることが出来ます。
 相続財産が多い場合、税務申告が必要となりますが、遺言書作成を行政書士に、税務申告のみを税理士に依頼する、ということも勿論可能です。

 遺言書の書き方によっては、将来的な不動産の処分や税務上での有利不利がありますので、遺言相続業務に強い行政書士に依頼することをオススメします。

②弁護士に依頼する

 弁護士の仕事といえば、すぐに思いつくのが被告人の弁護をする仕事だと思います。それ以外にも弁護士は個人や法人間の話し合いに関与することもでき、相続人の間で相続トラブルが発生すれば、弁護士が間に入ることもあります。

 厳密な書類を作成することや交渉事に長けており、相当な法律の知識があります。遺言相続を専門にしている弁護士は多くはないのかもしれませんが、依頼すればかなり心強い存在になることでしょう。

 かなりの知識を有する法律家であることから、他の専門家と違い、報酬は比較的高めに設定されています。また、遺言者からすれば、「相続人の間でトラブルが起きれば、相続人が弁護士に相談すればいいだろう」と考えることもありますので、遺言書作成ではなく、相続トラブルなどで弁護士のお世話になることが多いでしょう。

 相続に関するトラブル(紛争)は、弁護士がベストであると考えられます(そもそも弁護士以外ではトラブル(紛争)を仲裁・解決する権限がありません)。
 ある程度お金を支払っても紛争を解決したい、という方は弁護士に依頼すると良いでしょう。

③司法書士に依頼する

 司法書士は、行政書士と名前が似ていることから混同される方も多いですが、登記申請のプロフェッショナルです。あまり馴染みがない方もいらっしゃると思いますが、不動産を購入するときや、法人を設立するときに司法書士の力が必要になることがあります。

 相続財産に不動産があるときには、遺言相続を専門にしている司法書士を選ぶことも良いでしょう。相続財産に不動産がない場合で遺言書作成のみを依頼するなら司法書士を選ぶ必要性は薄いものの、不動産の相続手続きも合わせてお願いするなら、司法書士は適任です。

 費用についても、遺言書作成のみなら行政書士と同じくらいの価格設定が多いです。ただ、相続手続きもお願いするとなると、追加で費用がかかります。

④税理士に依頼する

 税理士は、税務申告の専門家です。相続税が発生する場合は税理士にお願いすることもあります。
 遺言相続業務を取り扱っている税理士もいらっしゃいますが、実は遺言相続業務の全てを行うことは出来ません。

 遺言書作成はそもそもサポートしか出来ませんし、相続業務として遺産分割協議書を作成するとしても、税務署に提出するための遺産分割協議書しか作成することが出来ません。
 つまり、相続税が発生しない相続の場合、遺産分割協議書を作成することは出来ません。

 相続税が発生しない場合、基本的には税理士に遺言相続業務を依頼する方は多くはないのではないかと思います。
 もちろん、税理士は他の専門家よりも税務について詳しいため、支払う税金が少なくなるような遺言書の提案もすることが出来ます(税理士だけでなく、他の専門家でも提案できる人も多くいます)。

 なお、具体的な税金の算出は税理士しか出来ませんので、他の専門家に支払うべき税金を尋ねても正確な回答を得ることは難しいでしょう。
 遺言書の作成サポートについては税理士も選択肢に入りますが、行政書士や司法書士に比べ高めになる傾向があります。ちなみに、当然ですが税務申告でも税理士に報酬を支払わなければなりません。

まとめ

①行政書士②司法書士③弁護士④税理士
主な仕事書類作成登記申請紛争解決税務申告
費用安い
(5万円程度~)
比較的安い
(7万円程度~)
高い
(10万円程度~)
比較的高い
(8万円程度~)
オススメする
依頼者
安く遺言書を作成したい人相続財産に不動産がある人相続トラブルが見込まれる人相続税の支払いが見込まれる人

主な仕事:あくまで一例です。専門家によっては得意不得意や専門分野があります。
費用:一般的に他の専門家と比較しているものであり、個人によって大きく差があります。「〇万円程度~」の記載はあくまで参考です。自筆証書遺言作成の場合であり、公正証書遺言作成の場合は、上記よりも費用がかかります。

 結論として、ただ単純に遺言書を作成したい、というのでしたらどの専門家でも良いと思います。なんなら遺言書作成のサポートは上記専門家でなくても構いません。しかし、上記専門家は法律を学び、国家資格を取得できるレベルの知識がありますので、後々遺言書の有効性に疑義が生じることを防ぎたいのでしたら、専門家に依頼することが良いでしょう。

 上記は遺言書作成のみの比較でしたが、遺言書を作成しておらず、遺産分割協議書を作成することは良くあるでしょう。
 遺産分割協議書も、①行政書士、②司法書士、③弁護士、④税理士のいずれも作成することが出来ますが、①行政書士・②司法書士・④税理士は遺産分割協議書の作成に制限があります。
 ①行政書士は、相続人の間で紛争が発生している場合は遺産分割協議書を作成することが出来ませんが、③弁護士はこのような場合でも遺産分割協議書を作成することが出来ます。
 相続人全員が納得して遺産分割協議が整っている場合は、行政書士に依頼すれば一般的に一番安くすむのではないかと思います。

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