保証人について
金融機関から資金調達をするときに、「保証人をつけること」が条件となることがあります。債務者が金融機関に返済できなかったときは、保証人が代わりに返済することになります。このことから、金融機関側としては、債務者か保証人が返済してくれることになるので、融資をする点で安心感があるのです。ちなみに、保証人は、個人・法人ともになることができ、複数人が保証人になることもあります。
まず、保証には「特定保証」と「根保証」があります。
特定保証とは、特定した債務のみを保証するものです。
一方、根保証はある程度の枠(極度額)までを保証するもので、何度も繰り返して融資を受けたり返済したりすることを予定している場合は、都度都度特定保証契約を締結する手間を省くために、根保証契約をすることもあります。根保証について、保証人が個人か法人かで少し異なる点があります。それは、個人が根保証を契約するときには、極度額を定めなければならない、ということです。この極度額(枠)を定めなければ、際限なく保証金額が増えることにもなりかねません。なお、法人が根保証契約をする場合には、極度額の設定は不要です。
次に、「単純保証」と「連帯保証」があります。
単純保証とは、債務者が返済できなかったときに返済しなければならない保証です。債権者は、まずは債務者に返済を請求しなければならず、債権者に対し「まずは債務者から返済してください」ということができます(催告の抗弁権)。債務者に返済する資力があることを証明できた場合には、単純保証人は返済(保証履行)を拒むことが出来ます(検索の抗弁権)。また、保証人が複数人いる場合は、保証人の頭数で割った金額のみを返済すればいいことになっています(分別の利益)。多くの人がイメージするのが、この単純承認だと思います。
しかし、資金調達するときの多くは連帯保証が条件になります。
連帯保証とは、単純保証と違い、催告の抗弁権・検索の抗弁権・分別の利益はありません。つまり、債務者が返済できなければ、金融機関は債務者の資力に関わらずいきなり保証人に返済(保証履行)を求めることができますし、保証人が複数いても、1人に全額の返済を求めることが出来ます。連帯保証人が金融機関から資金調達したようなものになります。
この保証をつけることが資金調達の条件となっているケースが多いことは、事業者が資金調達をする弊害になっているとの声もあり、金融庁としては、保証に頼らない融資をするように金融機関に要請しています。ただ、金融機関からするとリスクが増えることにもなりますので、財務内容が良かったり、過去の返済実績が十分にある事業者に対しては保証人免除とするケースもありますが、未だに保証人をつけることを条件としている金融機関も多くあります。
最後に、「物上保証」があります。
物上保証とは、個人や法人ではなく、個人や法人が所有しているモノを担保にいれることです。モノを担保にいれた場合、モノの所有者が物上保証人となります。
担保にいれるモノとしては、定期預金や不動産、株式などが挙げられます。もし債務者が返済できなかった場合は、金融機関が担保にいれたモノが処分し、返済に充てることになりますが、物上保証人はモノが無くなるだけで、それ以外の返済負担は生じません(ただし、物上保証人が単純保証人や連帯保証人も兼ねている場合を除きます)。
物上保証をすることにより、より多額の資金調達が叶うこともあり、例えば代表者の自宅や定期預金を担保にいれるケースもあります。
以上のように、保証には色々な種類があります。債務者からすると、連帯保証人が一番負担があるかもしれませんが、連帯保証を受け入れるぐらいの度胸がないと資金調達は難しいかもしれません。もちろん、金融機関の商品によっては、保証人不要のものもありますので、各金融機関の担当者に聞いてみるのも良いでしょう。ちなみに、担保を追加でいれたり、金利を相場より上げることにより保証人をいれずに済む場合もあります。
最後に、あまり嬉しくない情報なのですが、保証人が亡くなられますと、保証債務が相続されます。つまり、相続放棄をしない限り、相続人が保証人になることになります(もちろん、金融機関と交渉すべきことではありますが、法律上は保証債務も相続されます)。
ですので、被相続人が亡くなられたときは、資産を調べるだけでなく、負債(借入金)や保証債務がないかを出来る限り調べなければなりません。もし被相続人が会社を経営している場合は、その会社が借入をしていれば、被相続人(代表者)が保証人となっている可能性が高いですので、借入している金融機関に保証の有無を聞いてみると良いでしょう。