財務の基本(損益計算書)
財務の基本として、貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書を理解する必要があります。ここでは、損益計算書についてご説明致します。

損益計算書は、その会社が1年間で売り上げた金額や支払った経費などが記載されます。また、基本的には1年間の利益ですが、期中で決算期を変更した場合は、数か月間のみの実績とあることもあります。
損益計算書を見れば、どれだけ売り上げたのか、原価や経費、税金などを支払って、最終的にいくら利益を残したかがすぐに分かります。もちろん、利益が赤字となることもあります。
損益計算書の項目は、下記に分けられます。どの項目も大切ですが、①売上高、⑤営業利益、⑬税引後当期純利益は特に重視されます。
①売上高
②売上原価
③売上総利益
④販売費及び一般管理費
⑤営業利益
⑥営業外収入
⑦営業外費用
⑧経常利益
⑨特別利益
⑩特別損失
⑪税引前当期純利益
⑫法人税等
⑬税引後当期純利益
様々な業種がありますが、今回は飲食業で考えてみましょう。なお、業種によっては費用を②売上原価に計上したり④販売費及び一般管理費に計上したり、ケースバイケースですので注意しましょう。
①売上高
説明するまでもありませんが、その会社で売り上げたお金を計上します。ただ、注意しなければいけないのは、その会社に入ってきたお金の全額を計上する、ということではありません。
例えば、補助金や受取利息が入ってきたり、本業以外の売上などがある場合は、売上高に計上せず営業外収入に計上します。
飲食業の場合なら、料理の代金の収入が売上高に計上されます。
②売上原価
売上原価とは、その期の売上にかかる原価を言います。また、製造業などの場合、製造した工場の人件費も売上原価に計上します。
少しイメージしづらいですが、売上の基となったモノやサービスの仕入代金・費用となります。
飲食業の場合なら、料理の材料が売上原価にあたります。ここで注意しないといけないのが、「その期の売上にかかる」という部分です。仕入れはある程度まとめて行いますし、その期に仕入れた材料を全て使い切ってしまうことは稀です。
今期に100万円分の材料を仕入れたけれど、80万円分しか使ってないよ、という場合は売上原価として80万円を計上します。残りの20万円は、貸借対照表の流動資産(材料)で計上します。
このように、損益計算書と貸借対照表は密接な関係があり、それそれを別のものとして考えることは出来ません。
③売上総利益
売上総利益は、①売上高から②売上原価を差し引いた金額です。単純に粗利益ということもあります。
売上高より売上原価のほうが高いと、売上総利益は赤字となります。こんなことはあまりありませんが、飲食業でいうと、3万円分の材料を使って作った料理を1万円で提供しているようなものです。
売上総利益が赤字の場合は、かなり深刻な問題を抱えていますので、早急に売上(販売価格)と売上原価(仕入価格)の見直しを行うべきです。
④販売費及び一般管理費
販売費及び一般管理費には、いわゆる経費が計上されます。また、略して「販管費」とも言われます。
販管費には、役員報酬や給料手当、賞与などの人件費のほか、宣伝広告費や地代家賃、減価償却費などがあります。細かく見ていくと、固定費と変動費があり、事業計画書を策定するときに一つ一つ見ていくことになります。
ちなみに、固定費とは売上の金額に関わらず、必ず固定の金額が計上されるものです。例えば、人件費や地代家賃などがあります。変動費は、売上が増えれば増加し、売上が減れば減少するものです。例えば、広告宣伝費や販売費などがあります。経費削減を考えるときは、ついつい変動費を見てしまいがちですが、固定費の見直しも必要です。
⑤営業利益
営業利益は、③売上総利益から④販売費及び一般管理費を差し引いたもので、かなり重要な利益です。また、営業利益率(営業利益÷売上高)から、その会社の力を見ることができます。
営業利益もマイナスとなることがあり、営業赤字と言われます。営業赤字の場合は、営業を続ければ続けるほど赤字が膨らんでいくということになりますので、良くない状態です。
ですが、営業赤字が続いているなら会社が倒産するかといえば、そうではありません。例えば、多額の有価証券を保有しており営業外収入(受取利息)が計上される場合や、減価償却費が多額に計上されているだけで現金はそこまで減らない場合などがあります。後者の場合については、キャッシュフロー計算書にて詳しく説明します。
⑥営業外収入
営業外収入とは、営業活動以外で入ってきたお金をいい、受取利息などがあります。
飲食業を営んでいると同時に、所有している不動産を賃貸している場合(ただし事業目的に不動産賃貸業が含まれていない)は、家賃収入を営業外収入に計上することもあります。
営業外収入は、期によって増減することが多く、事業計画を策定するときには、過年度の営業外収入の内容を確認し、今後は営業外収入を計上できるかを考えなければなりません。
⑦営業外費用
営業外費用とは、営業活動以外で支払ったお金をいい、支払利息などがあげられます。この支払利息は、金融機関借入を行っているときの支払った利息にあたります。
支払利息の場合は、営業外収入と異なり、今後の見通しが立てやすく、借入金の返済予定表を基に事業計画書に落とし込むことができます。
⑧経常利益
経常利益は、⑤営業利益+⑥営業外収入ー⑦営業外費用で算出します。簡単にいえば、本業+本業以外での収支となっています。
経常利益がマイナス(いわゆる経常赤字)となる会社は、何が原因かを調べる必要があります。例えば、売上が低い・売上原価が高い・販管費が高い・営業外費用(支払利息)が高いなどが挙げられます。また、原因は1つとは限らず、複数が合わさって経常赤字となることも良くあります。
⑨特別利益
特別利益とは、一過性の収入で、毎期決まって入ってくるものではありません。例えば、補助金や固定資産売却益などが挙げられます。
事業計画書を策定するときは、「前期に補助金が200万円入ってきたから、今期、来期も特別利益に200万円を計上しよう」と考えてはいけません。余程確度の高い見込みがある場合は事業計画に計上しても良いかもしれませんが、基本的には来期以降の見込の特別利益は0で計上することが多いです。
⑩特別損失
特別損失とは、一過性の費用で、毎期支払ったり計上したりするものではありません。例えば、固定資産売却損や除却損などが挙げられます。
特別利益と同じく、事業計画書を策定するときには、確度の高い見込みの場合のみ計上しましょう。なお、確度が高いときには正直に事業計画書に落とし込みましょう。計画を良く見せたいときには、特別損失を計上したくない気持ちも分かりますが、ありのままの計画を策定するほうが良いです。特別損失を計上していない計画書を基に融資を受けた場合、毎期決算書を金融機関に提出しなければなりません。このとき、いきなり特別損失が出てくると、金融機関の担当者から「この特別損失は融資申込をするときには発生する見込みが高かったんじゃないの?」と突っ込まれたりします。
⑪税引前当期純利益
税引前当期純利益は、⑧経常利益+⑨特別利益ー⑩特別損失にて算出します。正直、税引前当期純利益よりも税引後当期純利益を重視するため、あまり見られていないこともあります。
⑫法人税等
法人税等は、税引前当期純利益に対してかかるものではなく、所得に対してかかります。また、繰越欠損金があれば、その期の法人税等が少なくなることも良くあります。
法人税等の算出方法は税理士にご確認いただければと思います。
⑬税引後当期純利益
税引後当期純利益は、⑪税引前当期純利益ー⑫法人税等で算出します。いわゆる「当期利益」「最終利益」と言われるものです。
税引後当期純利益により、黒字決算か赤字決算かが分かれます。黒字決算・赤字決算の金額は、前期末の貸借対照表の自己資本(繰越利益剰余金)に加算・減産されます。当然、黒字決算なら自己資本が厚くなりますし、赤字決算なら逆になります。
なお、新設したばかりの法人は先行費用の支払により赤字決算となることもあります。また、明確な理由があってあえて赤字決算にしているところもあります。
赤字決算が続いていても倒産するとは限りませんが、赤字決算が続けばいずれは債務超過になりますので、金融機関からの調達の難易度がちょっとだけ上がるかもしれません(金融機関に事情を話し理解を得れば、融資を受けることも勿論可能です)。
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