粉飾決算とは?中小企業経営者が知っておくべきリスクと見抜き方
「粉飾決算」という言葉を聞いたことはありますか?
粉飾決算とは、意図的に決算書の内容を良く見せるために行う不正な会計処理を指します。会社の財務状況を実際よりも良く見せることで、融資や取引先への信用を得ようとする行為ですが、メリットよりもはるかに大きなリスクが伴います。
まず、粉飾決算が企業会計原則に反している点について理解しておきましょう。
企業会計原則と粉飾の関係
企業会計原則には、以下の7つの基本原則があります。
- 真実性の原則
- 正規の簿記の原則
- 資本取引・損益取引区分の原則
- 明瞭性の原則
- 継続性の原則
- 保守主義の原則
- 単一性の原則
これらの原則は、企業が正確で透明性のある財務情報を提供するためのルールです。粉飾決算は、これらの原則に反するため、法律上・倫理上問題となります。
粉飾決算が行われる理由
中小企業の経営者が粉飾決算を行う背景には、以下のような理由があります。
- 金融機関から融資を受けたい
- 取引先に良い財務内容を見せたい
- 支払う税金を少なくしたい
- 業績連動型の役員報酬を多く得たい
粉飾は、一度行うとさらに粉飾を続ける必要が出てくるため、次第に大きな不正に発展してしまいます。小さな不正でも、嘘を重ねることで会社全体の信頼を損なう危険があります。
粉飾決算のデメリット
粉飾決算には以下のような深刻なデメリットがあります。
- 法律リスク:金融機関を騙して融資を受けた場合、詐欺罪に問われる可能性があります。
- 信用リスク:粉飾行為が発覚すると、会社全体の信用が失われ、取引先が離れたり、新規取引が難しくなったりします。
- 連鎖リスク:一度粉飾を行うと、次回以降も粉飾を続けざるを得ない状況になり、財務状況がさらに不安定になります。
粉飾に使われやすい決算科目
決算書には多くの科目がありますが、特に粉飾に使われやすい科目を理解しておくと、自社や取引先の決算書を確認する際の注意点になります。
現金
現金は、最も粉飾に使いやすい科目です。銀行や取引先が現金の実物を確認することは少なく、多額の現金を計上することで、資産を水増しすることが可能です。
- 現金商売以外で多額の現金を保管している場合は要注意
- 高額商品取引時には、銀行振込での取引が安全
売上(売掛金)・仕入(買掛金)
売掛金は未収金、買掛金は未払金ですが、架空取引を計上すると利益を水増しできます。
- 売上を過大計上すると利益が増える
- 仕入を過少計上するとコストが減り利益が増える
- キャッシュフローとの整合性が崩れる
商品・仕掛品
製造業でよく使われる科目で、倉庫にある商品の価値を水増しして計上することがあります。
- 実際の商品在庫と帳簿の差異に注意
- 不良在庫を適切に処理しないと自己資本比率が過大に計算される
貸付金・借入金
特に従業員や代表者との貸付金・借入金は操作されやすく、契約書がない場合が多いです。
- 代表者貸付・借入金で帳尻を合わせるケースもある
- 金額が大きい場合、金融機関が詳細を確認する
粉飾決算を避けるために
粉飾決算は短期的なメリットに見えるかもしれませんが、長期的にはリスクが極めて大きいです。
- 決算書は正確に作成する
- 自社や取引先の財務状況は透明性を重視
- 不正な会計処理は絶対に避ける
経営者として、健全な財務管理と透明性のある決算が、会社の信用と事業の安定につながります。
まとめ
- 粉飾決算は、法律・信用・事業継続のリスクが高い
- 現金、売掛金・買掛金、商品・仕掛品、貸付金・借入金は粉飾に使われやすい科目
- 一度粉飾すると連鎖的に問題が拡大する
- 正確で透明性のある決算書の作成が、健全な経営の基本
弊事務所では、中小企業経営者が適正な会計処理と財務管理を行えるようサポートしています。
粉飾決算のリスクに不安がある場合や、決算書の確認・改善を検討している経営者は、早めに相談することをおすすめします。

