粉飾決算について
資金調達をしたい(融資を受けたい)ばっかりに、決算書に細工をしようとする人がいます。いわゆる粉飾決算というものです。
粉飾決算は主に、売上や資産の過大計上、費用や負債の過少計上により自社の経営状態を良く見せたり、逆に経費を過大に計上して利益を少なくし、税金を減らしたりすることが多いです。よっぽど上手に作成しないと、金融機関の職員にはすぐにバレます。しかも、1回粉飾決算をしてしまうと、翌年度以降も決算の内容に整合性が取れなくなります。最初は微々たる粉飾であったものが、いつの間にか、隠しきれないほど大きな粉飾に繋がります。十分ご理解されていると思いますが、金融機関から資金調達を考えている場合は、絶対に粉飾決算はやめましょう。粉飾した決算書を提出して融資を受けると、金融機関をだまして資金を受けたことになり、金融機関から刑事告訴されることもあり得ます。
粉飾を勧める訳ではありませんが、下記の項目が粉飾によく使用されます。
①現金
➡粉飾で資産を増やしたいときは、現金を過大計上することがよくあります。預金の場合は、決算期時点で金融機関から発行された残高証明書や、通帳に記載されているため、改ざんすることは非常に難しいのです。その点、現金の場合は、法人の現金か、他人の現金か、そもそも法人の現金として存在しているかを証明することが難しいため、粉飾のために使われます。
②売掛金・買掛金
➡売掛金とは、売上にかかる未収金のようなものと考えて頂ければ結構です。また、買掛金とは、仕入れにかかる未払金のようなものです。
財務内容をよく見せるためには、売掛金(資産)は大きく、買掛金(負債)は少なく計上することになります。売掛金・買掛金には必ず相手先がいます(販売先・仕入先)。ここで問題となるのが、実体のない架空取引です。架空取引を行うことにより、売上や売掛金の過大計上などが出来てしまいます。
金額によりますが、架空取引を行うと貸借対照表・損益計算書に大きく影響するため、次期以降の決算修正は難しくなります。
なお、売上債権回収期間や仕入債務回転期間が粉飾前の決算期と差異が出ることもよくありますので、金融機関はこういった点も確認します。
③商品(在庫)
➡商品を販売する業種の場合は、商品(在庫)の水増しをして粉飾することも考えられます。金融機関の職員も、流石に倉庫に入っている商品の数を目で見て確認して、単価をかけて整合性があるか、まではしないと思います(ただし、不動産販売業の場合は、不動産の謄本を取得して所有者の確認を行うことはあります)。
本来、商品として不適切なものは計上するべきではありません(例えば、賞味期限が大幅に過ぎた腐った食品など)。しかし、実質的に不良在庫を資産に計上したままの事業者もいます。
④代表者貸付金・代表者借入金
➡資産・負債を粉飾すると、相手方の金額も粉飾することになります。そのため、帳尻合わせのために代表者への貸付金や代表者からの借入金で調整するケースが散見されます。
事業や代表者の生活のために代表者貸付・代表者借入を計上することは多額すぎる場合を除いて問題はありませんが、粉飾のためにこれらを計上することはよろしくありません。
そもそも、代表者へ多額の貸付金が計上されている場合は、金融機関から「これは何の為の貸付金ですか?会社から資金を借りた代表者に、それだけの資産(現預金や不動産)があるのですか?」と質問されるでしょうし、エビデンスの提出も求められます。
以上が主に粉飾に使用される項目です。
金融機関の職員は、何社も何社も決算書を見てきていますので、おかしな数字になっているところは何となく気が付きます。そして、事業者にどんどん質問してきます。
代表者のなかには、財務面は「経理や税理士に任してて、あまり分からないです」と仰られる方もいますが、少しでも自社の財務内容を把握されたほうが、自分のためにもなりますので、頑張って内容の把握に努めて頂ければと思います。