遺言・相続に関するQ&A

私は資産が多くはありません。遺言書を作成する必要はないですよね?

 遺言書は、絶対に作成しなければならない書類ではありません。遺言書を作成するかどうかは、その人の判断に委ねられます。しかし、遺言書を作るべき人・作らなくていい人でご説明させて頂いたように、将来の不安がある場合は遺言書を作成するに越したことはありません。
 相続争いは、実は身近な問題なのです。”相続争いが起きている”ということを本人が周りの人に言わないので、あまり身近に感じないのです。
 もし遺言書の作成を迷われているのでしたら、まずは財産一覧を作成してみてはいかがでしょうか?〇〇銀行の普通預金や定期預金、自宅や〇〇市にある不動産、〇〇株式会社の株式・・・などなどを書き連ねてみてください。
 次に、法定相続人を思い浮かべてみてください。もし自分がいなくなったら、遺産分割はスムーズに進むでしょうか?遺産分割をきっかけに法的紛争とまではいかないまでも、仲が悪くなる可能性はないでしょうか?
 ちょっとでも不安に思われたなら、遺言書の作成を検討しても良いかもしれません。

まだ遺言書を作成する年齢ではないのだけれど・・・

 満15歳未満か遺言能力のない人は、残念ながら遺言書を作成することが出来ません。遺言能力の有無とは、簡単に言えば遺言の内容や効果を理解しているかどうか、です。
 ここを読んでいるあなたは、恐らく満15歳以上で遺言能力を有している人ですので、遺言書を作成することが出来ます。
 遺言書を作成するにあたって、年齢は関係ありません(満15歳未満はダメですが…)。しかし、高齢になればなるほど、遺言書を作成する気力も体力も無くなっていくのが事実です。遺言書の作成を「また今度、また今度」と繰り返していくうちに、いつの間にか遺言書を作成する理由も忘れてしまいます。
 遺言書は何回でも作成しなおすことが出来ますので、今回作成した遺言書が最終決定版というわけでもありません。遺言書は後に作られたものが有効となります。
 遺言書の作成にはルールがあり、せっかく遺言書を作成しても、もしかしたら遺言書が無効となる可能性もあります。遺言書を作成するかどうかも含め、当職にご相談頂ければ幸いです。

遺言書と遺産分割協議書ってどちらが優先するの?

 遺言書と遺産分割協議書は、両方とも被相続人の財産の分配方法や金額などが記載されています。この2種類の書類で大きく違うのは作成者です。遺言書は被相続人が生前に作成するものであるのに対し、遺産分割協議書は相続人が被相続人の死後に作成するものです。
 遺言書がある場合でも、相続人全員の同意があれば、遺言書通りではなく、遺産分割協議に基づく遺産分割が可能です。遺言書が無い場合は、遺産分割協議に基づき、遺産分割することになります。
 「じゃあ遺言書なんて作る必要がないじゃないか」とお思いの方もいらっしゃるでしょう。しかし、遺言書は相続人の間の争いを防止する可能性のある書類なのです。相続人からすると、他の相続人に自分の相続分の主張はなかなかしづらいものです。その際、遺言書があれば相続人も「遺言書のとおりに遺産分割しようか」となり、よっぽど不公平な遺言でない限り丸く収まるのです。
 さらに、遺言書には付言事項を記載することが出来ます。「相続人Aさんには、長期間にわたる介護で大変お世話になったので、法定相続分より少し多めにしました。他の相続人はこのことを納得してくれると信じています。」と付言されていれば、多少不公平な遺産分割でも、相続人全員が納得するでしょう。これが遺産分割協議となれば、「介護でお世話したのに・・・」「介護といっても知れてるじゃないか」と争いになり得ます。

遺言書は好きなように記載しても良いの?

 今まで再三にわたり遺言書をオススメしてきましたが、自筆証書遺言の場合は厳格なルールがありますので、こちらをご参照ください。
 遺言書で、公序良俗に反する内容は無効となります。例えば、「不貞相手に相続財産全てを遺贈する。」との記載がある場合は無効になり得ます。この場合、不貞相手の関係や目的、配偶者との関係などを総合的に見て裁判所が無効かどうか判断することになります。
 また、詐欺や脅迫を受けているなかで作成された遺言書も無効になります。
 遺言内容について、ややこしい内容や判断が分かれる内容は記載しないほうが良いでしょう。記載して無効となるわけではありませんが、いざ相続を、という段階で相続人の間で争いが起きる可能性があります。例えば、「〇〇市にある土地をAさんに相続させる」と記載されていますが、実際にはその土地上に建物がある場合などです。土地はAさんが相続するとして、その土地上の建物は誰が相続するのでしょうか?遺言者は土地・建物をセットで相続させたかったのかもしれませんし、公平さを考え、土地はAさん、建物は他の相続人と考えていたのかもしれません。
 遺言書を書く時には、遺留分も頭に入れて記載しなければなりません。さもなければ、相続人の間で遺留分侵害請求が発生するかもしれません。
 遺言書を書くなら「明確に、だれが見ても分かるように!」を心がけましょう。

遺言書に記載した財産は使ってはいけないの?

 そんなことはありません。例えば、遺言書に「〇〇銀行の預貯金をAさんに相続させる。」と記載しても、〇〇銀行の預貯金を使い果たしても問題ありません。この場合は、上記遺言は撤回されたものとして扱われます。同じように「〇〇市の土地建物をBさんに相続させる。」と記載していても、その土地建物を売却することも出来ます。
 ですので、遺言書に記載しても、その財産を使っても大丈夫です。ただし、財産を使うことにより相続人の間で不公平感が出る可能性はあり得ます。例えば、遺言書記載時に、「〇〇銀行の預貯金はAさんに相続させる。」「✕✕銀行の預貯金はBさんに相続させる。」と記載したとします(相続人はAさんとBさんのみ)。この時、〇〇銀行、✕✕銀行それぞれに200万円を預けていたとします。さて、遺言書を作成後に、生活費として〇〇銀行の口座からお金を引き出し続けていた状態で亡くなると、AさんとBさんの相続金額に差異が発生します。平等に相続したいのでしたら、例えば「〇〇銀行の預貯金はAさんとBさんで2分の1ずつ相続させる。」などの書き方のほうが良いでしょう。

遺言書で、相続人以外に財産を渡すことは出来るの?

 結論から申し上げますと、可能です。例えば、息子の配偶者(Aさん)が献身的に介護をしてくれたとしましょう。しかし、Aさんは相続人ではありませんので、遺言書がないと財産を渡すことが出来ません。そこで、遺言書で「遺贈させる」旨の記載があれば、Aさんに財産を渡すことが出来ます。
 遺贈とは、遺言書で特定の人に財産を贈与することで、遺言者の一方的な意思表示ですので、生前に受遺者(遺贈を受ける人)の承諾は要りません。
 遺贈をするにあたり、大きな問題点が3つあります。①ルールに則り、遺言書で遺贈する旨を記載しなければならないこと、②受遺者に相続税が発生すること、③相続人の相続財産が減少すること、です。
 ①遺言書を作成するには、厳しいルールが定められています。遺贈は遺言書で行うものですので、基となる遺言書が無効とされれば、遺贈も無効と判断されます。
 ②受遺者(遺贈を受ける人)も無料で財産を受け取れるほど甘くはありません。相続人が相続で財産を受け取ることと同じく、受遺者にも相続税が発生します。
 ③遺贈をすることにより、相続人の相続分が減少することになります。相続人からすれば、どこの誰かも分からない人に遺贈されたことにより、自分の取り分が減ってしまったと嘆く人もいるかもしれません。
 ちなみに、遺贈者は遺贈を断ることも出来ます。その場合、遺贈の対象となっていた財産は相続人が相続放棄をしない限り、相続することになります。

被相続人が借金を残して亡くなったのだけれど・・・

 ここでは、被相続人Aさん、配偶者Bさん、子ども2人(Cさん、Dさん)で、Aさんが銀行から借金がある状態で亡くなったとします。
 銀行はAさんに貸したお金(融資金)を回収する必要がありますが、誰に請求するのでしょうか?
 遺言書や遺産分割協議書の記載に関わらず、銀行は法定相続人であるAさん、Bさん、Cさんに融資金の回収を迫ることが出来ます。実務上は、銀行もそこまで鬼じゃないので、相続人と話し合いを経て、誰からいくら返済してもらうかを決めます。そもそも、BさんとCさんが未成年の場合は、借金の返済能力がない可能性もありますので、Bさんが余程高齢で事理弁識能力が無いなどの場合じゃないかぎり、銀行はBさんと話をつけることになります。
 銀行からの借金取り立てを回避するには、全額返済するか相続放棄するしかありません。

被相続人が保証人になっているんだけれど・・・

 銀行などから借入をする際には、保証人となっていただくことがよくあります。保証人が亡くなった場合はどうなるのでしょうか?
 実は、保証債務も相続することになってしまいます。よくあるのは、被相続人が法人を経営していて、銀行から借入をするときに保証人になっていたケースです。上記の被相続人が借金がある状態で亡くなった場合と同様に、相続人が保証することになります。実務上では、未成年者などの保証能力がない人を保証人とすることは、あまり考えづらいですが、各銀行の判断によりますので、あり得なくはありません。
 多くは法人が借入をしており、代表者が保証人となるパターンです。では、代表者が亡くなったとき、代表者に相続人ではなく、従業員が代表者に就任することとなった場合はどうでしょうか?この場合でも、相続人は保証債務を相続することとなります。相続人からすると「法人とは関係ないのに・・・」と思うかもしれません。しかし銀行側も、あまり関係のない人を保証人とするのは忍びないと思っているはずです。銀行に対して、新代表者を保証人とし、相続人の保証債務を解除するように交渉してみるのが良いと思います。
 案外、銀行とは話し合いで何とかなるケースもありますよ。

遺言書はどこに保管したらいいの?

 遺言書には、自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言があります。このうち、遺言書保管制度を利用した自筆証書遺言と公正証書遺言は、それぞれ法務局と公証役場できちんと管理・保管されることとなります。
 では、遺言書保管制度を利用していない自筆証書遺言と秘密証書遺言はどこに保管するべきなのでしょうか?
 「ここに保管しなければならない」という決まりはありませんが、多くの人は仏壇やタンス、不動産の権利証などの重要書類と一緒に保管しているようです。
 逆に保管するのにオススメしない場所は、①なかなか見つかりにくい場所、②銀行の貸金庫です。
 ①自宅の中でも、床下収納の底など、なかなか見つかりにくい場所は多くあります。相続人が、いざ遺産分割をしようという段になって、「遺言書が無いから、遺産分割協議書を作ろう」となってしまうかもしれません。せっかく遺言書を作成したのですから、ちょっと探せば見つかるところに保管することをおススメします。
 ②遺言書を銀行の貸金庫のなかに保管している方もいらっしゃるようですが、あまりオススメはしません。確かに、自宅保管に比べて安全ではありますが、遺言者が亡くなった場合、相続人全員の同意・立ち会いがないと貸金庫の中身を取り出すことが出来ません。相続人1人のみで被相続人の貸金庫を開けることが出来るようになると、後々になって「貸金庫に保管されていたはずの財産が無い!貸金庫を1人で開扉したAさんが盗んだに違いない!」とトラブルになりかねません。よって、相続人が全員近くに住んでおり、貸金庫の開扉及び取り出しについて万に一つも問題は起きない、と断言出来る場合でないと、貸金庫に遺言書を保管することは避けたほうが良いでしょう。

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