知っていて損はない相続の基本⑤

遺言書(自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言)とは?

 遺言書には、主に「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類があります。遺言書作成にはルールがあり、そのルール通りに作成しなければ、遺言書が無効となるばかりか、相続人間で争いが起きる可能性もあります(法定相続割合で相続したい相続人と、無効の遺言書の通りに相続したい相続人との間の争いなどがあります)。活用する機会が少ない「危急時遺言」「隔絶地遺言」もありますが、ここでは説明を割愛致します。

 民法上では相続人や相続割合が定められていますが、必ずしも従わなければならないわけではありません。相続財産を好きな割合で分配したい場合や、ご友人に遺産の一部を遺贈したいのでしたら、遺言書の作成が必要です。遺言書は、自分の意志を表明できる最後の書類なのです。

・自筆証書遺言

 自筆証書遺言では、全文・日付・氏名を自署しなければなりません。

 全文とは、遺言事項(〇〇を××に相続させる…など)を書き記した部分のことです。なお、財産目録を作成する場合は、財産目録は自署ではなくても問題ありませんが、各頁に署名・押印が必要です。

 日付は、きちんと日が特定できるように記載しなければならず、「令和7年1月吉日」のような記載は認められません。また、自署しなければならないため、日付印を使用することも出来ません。。

 氏名は、ペンネームなども有効とされた判例がありますが、後々のトラブル防止のためにも、戸籍の通りに記載するべきです。なお、旧漢字がある場合でも、戸籍の通りに記載します。

 多くの文字を書くことになりますが、一番費用がかからない方法です。なお、自筆証書遺言を作成中に書き損じた場合、修正する方法も厳しく定められていますので、最初から作成するほうが良いでしょう。行政書士などの専門家に頼らずに自分で作成することも可能ですが、遺言書に不備があったりすれば、無効とされることもありますので、自信が無ければ専門家のサポートを受けることをオススメします。

・公正証書遺言

 公正証書遺言は、公証人が作成する遺言書です。遺言者のほか、公証人と証人2人以上が立ち合いのうえ、遺言者が遺言の内容を口頭で公証人に伝え、公証人が文章にまとめます。また、自筆証書遺言と違い、自署は氏名のみですので、体への負担も少なくて済みます。

 公正証書で作成するため、偽造や変造の心配がないこと、法的に有効であること、紛失の心配がないこと、検認手続きが不要であり、すぐに相続手続きを開始できることが主なメリットですが、デメリットとして、時間や手数料がかかってしまいます。また、相続財産が多ければ多いほど、手数料も高額になります。

・秘密証書遺言

 秘密証書遺言とは、遺言書の内容を秘密にしたまま、公証役場で遺言書の封筒の存在のみを証明してもらうものです。遺言者が署名さえすれば、代筆やワープロなどで作成することも出来ます。その遺言書を封緘し、公証役場で自分の遺言書であることの証明をしてもらい、封を自宅などで保管します。

 偽造や変造のリスクが低いメリットがありますが、公証役場手数料、証人2人以上が必要であることで手数料もかかりますので、現在ではあまり使用されていない方法です。

遺言書の保管はどうすれば良いの?

 公正証書遺言は、公証役場に保管されますので、紛失のリスクはありません。しかし、自筆証書遺言と秘密証書遺言は遺言者が保管するため、紛失のリスクや、遺言書がないと思い込み、遺産分割後に発見されることもあります。

 遺言書を残している場合、遺言執行者や相続財産を一番相続する人に、どこに遺言書があるかを伝えておくことが大切です。

 遺言書は基本的には自宅で保管する人が多いですが、紛失や変造のリスクも捨てきれません。そこで、自筆証書遺言ならば、遺言書保管制度があり、手数料はかかってしまいますが、法務局(遺言書保管所)に保管申請が出来ます。また、本制度を利用することにより、遺言書の偽造や変造などが防止され、検認が不要となります。

 遺言書保管制度の手続きや詳細は、法務省のホームページに詳しく載っています。https://www.moj.go.jp/MINJI/minji03_00051.html

検認とは?

 検認とは、遺言書の形状や日付・署名など検認の日時点での遺言書の内容を明確にし、遺言書の偽造・変造を防止するための手続きです。そのため、公証役場に保管している公正証書遺言や、法務局(遺言書保管所)で保管している自筆証書遺言は、確実に偽造や変造が出来ないため、検認が不要となっています。

 つまり、公正証書遺言と法務局(遺言書保管所)で保管している自筆証書遺言以外は検認を受ける必要があります。検認は、戸籍謄本などを収集して相続人を確定させたうえで、必要書類を揃え、家庭裁判所に申し立てを行う必要があります。検認を受けない場合、過料が科せられる可能性もあるので、気を付けましょう。なお、遺言書に封がされている場合は、開封せずに家庭裁判所に提出しなければなりません。

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