遺産分割協議をする前に

 被相続人が遺言書を残していなかったときは、相続人は遺産分割協議をしなければなりません。しかし、遺産分割協議にも決まりごとがありますので、注意が必要です。
 なお、遺言書があっても、相続人全員の合意があれば遺言書で指定された遺産分割方法ではなく、協議による遺産分割方法が可能です。
 遺産分割協議をする前に確認しておかなければならないことがあります。

遺産分割協議の参加者は?

 遺産分割協議の参加者は、相続人全員です。誰か1人でも欠けていれば、その遺産分割協議は無効となる判決もあります。

 参加者のうち、未成年者がいる場合は注意が必要です。基本的には、その未成年者の親権者が代理人となりますが、代理人となれないケースもあります。
 例えば、未成年者とその親権者がともに相続人となる場合は、親権者は代理人になることが出来ません。もし親権者が未成年者の代理人になってしまうと、「未成年者の相続財産をゼロにして、その分を自分の相続財産にしちゃおう」ということが出来てしまうからです。これを、利益相反行為といいます。
 こういった場合は、家庭裁判所に未成年者の特別代理人の選任を申し立てなければなりません。利益相反行為に当たらない成人ならば誰でも構いませんが、遺産分割協議内容が知られてしまうので、親族ではなく専門家に特別代理人になってもらいたい、という人もいます。

 また、障がいを持っている方が相続人となる場合は、成年後見人の選任や特別代理人の選任が必要になります。

 他に、相続人から相続分の譲渡を受けた人も遺産分割協議の参加者になります。
 

遺産分割協議に何が必要?

・被相続人の戸籍謄本
 被相続人の生まれてから亡くなるまでの一連の戸籍謄本を確認して、相続人を調査しなければなりません。もし婚外子がいれば、その婚外子も相続人になります。よって、相続人が誰かを決めつけるのではなく、戸籍謄本を確認しなければなりません。

・被相続人の財産目録
 被相続人の財産目録も必要です。この財産目録の作成に時間がかかる場合があります。被相続人が持っていた財産を出来るだけ記載し、その財産をどうやって分割するかを協議することになります。もし、遺産分割協議の終了後に、新たに被相続人の財産が見つかった場合は、その財産のみの遺産分割協議を行うことになります。

・実印と印鑑証明書
 遺産分割協議は後日トラブルにならないように遺産分割協議書に記載しておくことが一般的です。遺産分割協議書には署名押印が必要ですが、実印で押印することになります。よって、印鑑登録していなければ、印鑑登録をする必要があります。遺産分割協議書と、各相続人の印鑑証明書をセットにして保管しておくのがベターです。

事実上の相続放棄

 相続人が、相続財産を受け取らない選択肢も認められています。いわゆる、相続放棄というものです。相続放棄は、相続人単独で行うことが出来ますが、家庭裁判所に申述が必要です。

 本来なら、相続放棄の手続きを取るべきではありますが、遺産分割協議により、自分への相続分をゼロとすることにより、事実上の相続放棄をすることも出来ます。
 事実上の相続放棄をすることにより、他の相続人に財産を遺すことが出来る、相続人間のトラブルを回避することが出来るなどのメリットがある一方、被相続人が借入をしていたときは、その債権者(銀行など)に事実上の相続放棄を主張することが出来ないなどのデメリットもあります。つまり、銀行などから「被相続人の代わりに相続人であるあなたが借金を払ってください」と言われたとき、断ることが出来ません。

 何も考えずに遺産分割協議で相続分ゼロにするのではなく、被相続人の負債の有無を確認しなければなりません。

まとめ

・遺産分割協議は相続人全員の合意が必要です。
・遺産分割協議には準備しなければならない書類等があります。
・被相続人の資産だけでなく負債も確認する必要があります。
・事実上の相続放棄も可能ですが、デメリットもあります。

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