平等な相続
「相続人に平等に相続させたい」と考える人は沢山いらっしゃるでしょう。しかし、なかなか平等な相続は難しいものです。
平等な相続とは?
多くの人が考える平等な相続とは、各相続人が同額を相続することだと思います。客観的に見れば、これが平等だと考えられます。
相続人は、被相続人の子どもであるAさん、Bさん、Cさんの3人で、相続財産は現預金6,000万円のみのケースを考えてみましょう。
Aさん、Bさん、Cさんがそれぞれ2,000万円を相続すれば、平等な相続と考えるのではないでしょうか。
では、AさんとBさんには潤沢な資産があり、Cさんのみが病気がちでなかなか職につけない状態でしたらどうでしょうか?Cさんには多めに相続させたい気持ちも湧くのではないでしょうか?
平等とは難しいものです。
平等な相続が難しい理由
相続財産が預貯金だけなら、相続人の人数で頭割りすると平等な相続といえるかもしれません。
預貯金以外にも、株式や投資信託など、換金することが容易で、金銭的に見積もることが出来るのでしたら、預貯金と同じように相続人の人数で頭割りすればいいと思います。
しかし、不動産や自動車などは、相続人全員が納得できるはっきりした金銭的な見積もりを出すことは難しいと考えられます。
不動産については、評価証明書で評価額は出ていますが、山奥の山林などは維持管理費がかかることから実質的にマイナスの資産だと考える相続人もいるでしょう。先祖代々住み続けてきた家屋は、評価証明書の評価額よりも高い価値があると考える相続人もいるでしょうし、逆に古家なので取り壊し費用がかかることから、大した価値もないと考える相続人もいるでしょう。
自動車も、見積サイトによって評価額に大きな差が出ます。
また、生前に相続人の1人にだけ多額の金銭等を贈与していた場合も問題となります。実務上では、特別受益として相続財産の調整が行われますが、贈与した時期によっては不平等にもなり得ます。
例えば、3年前に株価の低い株式を相続人に贈与したが、今では株価が高騰している場合などがあります。
これらのことから、完全に平等な相続にすることは難しいと考えられます。
平等な相続に出来ないと?
平等な相続に出来ないと、相続人同士で諍いが発生するかもしれません。
「ずっと音信不通だった兄貴が、親の介護をしていた自分と同じ相続分を得られるなんてズルい!」「妹は大学の入学費用まで貰っていたのに、自分は高校を卒業して働いて、家にお金を入れていたのに・・・」など、言い出したらキリがありません。
相続財産が多くなくても、遺産分割調停になることもありますし、これをきっかけに兄弟仲が悪化することもあります。
平等な相続にするための方法
まず念頭に置いておかなければならないのは、完全に平等な相続にすることは難しい、ということです。しかし、出来る限り平等に近づける方法もあります。
それは、遺言書で相続分を指定することです。
遺言書で平等な相続分を指定するためには、①自分の財産を把握する、②相続人への生前贈与した金額を把握する、③生命保険金の受取人と受取予定金額を把握する、④その他の相続人の事情を考慮する、などの必要があります。
遺言書で相続分を指定しておけば、相続人も「被相続人がわざわざ遺言書まで遺してくれてるんだから、この遺言書どおりに遺産を分割しようじゃないか」となる可能性が上がるでしょう。
遺言書を書いていなければ、遺産分割協議で相続人の間でトラブルや言い合いが起こることもあります。
また、自分の資産は、誰に相続させるのが相応しいかを考えることも肝要です。
「先祖代々受け継いできた土地は、今後も受け継いでいきたいから子供のいる長男に相続させる」とか、「シングルマザーの次女は車を所有していないから、自動車を相続させる」などを考えることになります。
ちなみに、自分の全ての財産を現預金化する、という方法もあります。
不動産や自動車などを相続させたくない場合は、あらかじめ売却しておくのです。住む家は借りなければなりませんし、自動車もレンタカーになるでしょうが、相続財産を現預金のみにしておくことで、手間のかからない相続を実現させることが出来ます。
まとめ
・相続人の立場から、平等について再度考えてみる必要があります。
・平等に相続することは思ったより難しいと分かります。
・相続人の間で諍いが起こりうる場合は、遺言書を作成することも有用です。