対話で分かる遺言相続!(遺言編)

対話で分かる遺言相続!(遺言編)へようこそ!
行政書士のだいとーです!よろしくお願い致します!

やじろーといいます。
今日は遺言について教えてほしいです!
よろしくお願いします!

遺言というと何を思い浮かべますか?

遺言と言えば遺言書ですかね?
遺言書って、遺言内容を紙で残しておくものですよね?
書き方とかは分からないんですけど・・・。

仰る通り、一番イメージしやすいのは、自分で紙に書いて作成する自筆証書遺言ですね。
ほかにも、公正証書遺言や秘密証書遺言などの種類があります。
それぞれ一長一短があるので、人によって作成すべき遺言書が変わります!

え?遺言書に種類があるんですか?
ちなみに一番安く作成できる遺言書は何ですか?

一番安く作成できるのは自筆証書遺言ですね。
全文・日付・氏名を自署し、押印することが要件ですが、紙とペンさえあれば作成できるので、費用はほぼかからないと言えます。
ただ、ちょっと間違えると遺言書自体が無効になる可能性もありますので、専門家にサポートをお願いするほうが良いと思います!

なるほど。
自筆証書遺言は、自分で保管しておかないといけないのですか?
作成しても失くしてしまう気がして・・・。

自筆証書遺言は、自分で保管するか、相続人に預けるか、法務局に預けるか、のいずれかを選んでいる人が多いです。
自分で保管する場合は、タンスや仏壇、金庫に入れている人が多いと思います。

法務局に遺言書を預けることが出来るんですか?
それなら失くす心配がないですよね!

「自筆証書遺言書保管制度」というのが創設されまして、法務局で預かってもらうことが出来ます。ちょっとした手間と費用はかかりまが、検認が不要であることや紛失・改ざんなどのリスクがないメリットもあります。

それは良いですね!
ところで、検認ってなんですか?

検認とは、遺言書の偽造や変造を防止するための手続きです。
遺言書が見つかってから、相続人が遺言内容を書き換えたりすることが考えられるので、それを防ぐために、自筆証書遺言書保管制度を利用していない自筆証書遺言と秘密証書遺言は検認を受けないといけない決まりになっています。

たしかに、相続人が遺言書を書き換えたりする可能性はありますね。
検認には手続きが必要なんでしょう?できれば相続人には面倒をかけたくないんだけどなぁ。

相続人に面倒をかけたくないのでしたら、公正証書遺言を作成する方法もあります。
公正証書遺言は、公正証書で作成する遺言書で、かなり厳格な様式です。
しかも、公証人や2人以上の証人がいるので、きっちり遺言書を残しておきたい人にピッタリです。
公証人手数料や証人への手数料がかかるなど、お金がかかってしまいますが検認が不要であること、公証役場にも公正証書遺言が保管されることから紛失や改ざんなどのリスクがないことなどのメリットもあります。

遺言書はしっかり作ったほうが後々面倒も起こりにくいと思うので公正証書遺言で作成するのもありですね!
しかも検認が要らないのなら、相続開始からすぐに相続の手続きも出来るってことですよね?

その通りです!
公証人や証人に、遺言内容を知られてしまうことに抵抗がある方は、秘密証書遺言を検討しても良いかもしれません。
秘密証書遺言は、公証役場で公証人に遺言書の存在のみを証明してもらうものです。
遺言内容は手書きでもパソコンで作成しても構いませんが、氏名は自署し、押印しなければなりません。その遺言書を封筒に入れて、その封筒にも押印します。なお、遺言者の署名押印が可能なら、代筆でも第三者がパソコンで遺言内容を作成しても問題ありません。
デメリットとしては、公証人手数料がかかることと、証人2人以上が必要であり、証人への手数料がかかること、検認は必要であること、遺言書の紛失リスクはあることなどが挙げられます。

秘密証書遺言なら、あまり多くの字を書くことが出来ない高齢者にはいい方法かもしれませんね!

そうですね。
ただ、先ほど申し上げたデメリットを考えると、もう少しお金を出してきっちりした公正証書遺言にする、という方が多いです。実際、秘密証書遺言を作成される方は非常に少ないです。

どの遺言書の方法も一長一短があるんですね・・・。
ところで、公正証書遺言や秘密証書遺言を作成するときに証人が必要ですよね?
その証人は、誰でもいいんですか?

残念ながら、証人は誰でもいいというものではありません。
遺言内容によっては、遺言者に脅しをかける推定相続人もいる可能性がありますので、相続に関わる恐れのある人は証人になることが出来ないようになっています。
具体的には、①推定相続人および推定相続人の配偶者や直系血族、②受遺者(遺言で財産を受ける人)および推定相続人の配偶者や直系血族、③未成年者、④公証人の配偶者や関係者です。

言われてみれば、遺言書を作成する場に相続の関係者や当事者がいれば、遺言者の今後の生活に影響がある可能性がありますね。ある推定相続人に不都合な遺言内容なら、その推定相続人が遺言者を虐待するかもしれませんしね。

遺言者を虐待するのは良くないですね。でも実際にニュースなどでは親族を手にかける人も多くいますからね。亡くなった人が遺言書を作成していたかどうかは分かりませんが・・・。

遺言者を虐待とかをしても、相続人として認められるんですか?
僕なら、そんな人には相続させたくないし、遺留分も認めたくないんだけど。

民法ではそういうことも規定されています。
遺言者が家庭裁判所に請求して、その悪いことをした推定相続人の相続権を失わせることができます。また、遺言書に相続廃除する旨の記載をし、遺言執行者が家庭裁判所に申し立てする方法もあります。これを相続廃除といいます。
ただ、何でもかんでも相続廃除が認められるわけではありません。ちょっと悪口を言われただけで相続権を廃除されたのでは、たまったものじゃありません。
相続廃除が認められるのは、ケースバイケースですが、被相続人に対して虐待や重大な侮辱を行ったり、被相続人の財産を不当に処分したり、被相続人に多額の借金を肩代わりさせたり、実質的に夫婦上の関係がない配偶者などの場合があります。
なお、相続廃除を取り消すことも可能ですよ。改心することもありますからね。

ちょっと安心しました!僕の家族は、僕に酷いことはしないと信じているけどね。

ちなみに、家庭裁判所への申し立ても不要で、一発で相続権を失わせることもあります。
相続欠格といって、被相続人の意志は関係なく、法律上当然に相続権を失うことになります。
例えば、被相続人を殺害したり、同順位以上の推定相続人を殺害したり、遺言者を脅迫して遺言書を作成させたりした場合などは、相続欠格になります。

自分が相続できるようにしたり、相続分が多くなるようにするために危害を加えたらダメですよね!
そういった悪い人には相続権が無くなるべきです!

相続廃除も相続欠格も、しっかり民法に規定されているので遺言者はちょっと安心感があるでしょうね。
両方とも、遺留分は認められませんが、代襲相続は認められています。

代襲相続は認められているんですね。
悪いことをしたのは推定相続人であって、その子どもは何の関係もないですもんね。

相続欠格になると、遺産分割協議にも参加できなくなります。悪い人は相続の話し合いに入ってほしくないですからね。

そういえば、遺産分割協議ってどんな場合にするんですか?絶対にしないといけないんですかね?

遺産分割協議は、被相続人が遺言書を残していない場合か、遺言書を残していても相続人全員の同意により遺産分割方法を決める場合に行います。
つまり、遺言書を残していても必ず遺言書通りに遺産分割されるとは限らないのです。ただ、相続人のうち1人でも「遺言書の通りに相続したい」と言えば、遺言書に記載された通りの遺産分割になります。

遺産分割協議で揉めることってやっぱりありますよね?

残念ながらありますよ!遺産分割事件の約76%は遺産額5,000万円以下で起きていますので、決してお金持ちの家だけの話ではないのです。
そうそう、遺産分割協議にもルールがあるんですよ。
遺産分割協議は、相続財産を誰が、何を、どのくらい、の3つを決めなければなりません。
まず、相続人全員が参加しなくてはなりません。たとえ相続人の1人でも欠けていれば、遺産分割協議は成立しません。
また、遺産分割協議の結果を書面で残しておきます。その書面を遺産分割協議書といいますが、後から「言った」「言ってない」のトラブル防止にも役立ちますし、遺産分割協議書がないと相続財産の名義変更が進みません。
さらに、遺産分割協議書には相続人の実印を押印し、印鑑証明書も添付しなければなりません。
ちなみに、自分の遺産分をゼロとすることも出来ます。

なかなか大変そうですね・・・。
でも我が家では何とかなると思います。
ちなみに、遺産分割協議がまとまらなかったらどうなるんですか?

遺産分割協議がまとまらなかったら、ですか。
簡単にいうと、弁護士のお世話になったり、裁判所のお世話になります。
かなりお金がかかりますよ!

うわぁ、それはつらいですね。
やっぱり、遺言書は作成したほうが良いですかね?

個人的には、遺言書を作成していても良いのではないかと思います。
①子どものいない夫婦で、配偶者など特定の人に多くを相続させたい人
②不動産を所有しているが、現預金は少ない人
③内縁の配偶者や子どもの配偶者などの相続人ではない人に相続させたい人
④相続人同士の仲が悪く、相続争いが発生する可能性を考えている人
⑤再婚していて、前の配偶者との間に子どもがいる人
には遺言書を作成することを強く勧めています。

当てはまる人が結構いそうですね。どうしてですか?

まず、①に当てはまる人の場合は、法定相続人が配偶者と被相続人の兄弟姉妹、ということもありえます。もしかしたら代襲相続があり、配偶者と被相続人の甥・姪が相続人になるかもしれません。
遺言書がないと、そこまで関係性が強くない人が遺産分割協議をしなければならないですし、目安となる法定相続割合は配偶者が4分の3となります。被相続人としても、兄弟姉妹や甥・姪には相続させずに、全財産を配偶者に残してあげたいと思う人が多いのではないでしょうか。

そうですね。甥・姪からすれば、「ほとんど関わりのない叔父さん・叔母さんが亡くなって遺産が入ってきた!ラッキー!」と思うかもしれませんよね。配偶者としても、今後の生活があるわけですし、少しでも多く相続できたほうが良いでしょうね。

②に当てはまる人もよくいらっしゃいます。
例えばやじろーさんが時価5,000万円の自宅を所有していて、現預金が100万円しかない場合、遺産分割協議はどうなるでしょうか?
奥様が自宅、お子さま2人がそれぞれ現預金50万円を相続するとなると、お子さまの相続分が非常に少なくなりますよね。揉めることもあり得ると思います。
ですので、遺言により自宅は3人で共有とするなどの指定をすることで、少しでも揉める可能性を少なくすることが出来ます。各相続人の資産や今後の生活基盤によっては、自宅を売却して現金化させる方法を考えても良いかもしれません。

そう考えると、かなり難しいですね。
うちの家族は揉めることはないと信じていますが、実際に財産を目の前にするとどうなることやら・・・。

次に、③に当てはまる人もいると思われます。
そもそも、配偶者とは正式に籍に入れた人のことですので、内縁の配偶者は相続人になりません。
しかし、籍を入れてはいないものの、長年連れ添った相手に財産を残してあげたい、という方も大勢いらっしゃるでしょう。そういった場合は、遺言書を作成しないと財産を残してあげることが出来ません。

なるほど。
相続人以外に財産を渡したい人は、事前に渡すか遺言書に記載するかしかないんですね。

④に当てはまる人もよくいると思われます。
先ほども軽く説明しましたが、相続争いが見込まれているなら、いっそのこと遺言者が相続内容を決めてしまえば良いのです。それでも相続人全員が納得しないのなら、遺産分割協議をすればいいでしょう。

遺産を残す側の人間として、出来ることはきっちりしておきたいですね。
遺言書を作成することは簡単ではないでしょうが、頑張ってみたいと思います。

最後に⑤に当てはまる人です。
前妻との子ども、後妻との子どもがいれば、両方とも相続人になります。さて問題になるのが、子ども同士が面識がない場合です。
また、愛情の注ぎ具合も当然違うでしょうし、後妻の子どものほうに多く財産を残したいという気持ちもあるかもしれません。その場合、遺言書を遺しておかなければ、基本的には前妻との子どもも後妻との子どもも相続分は同じです。

人によって違うと思いますが、相続人の相続分を変えたいときには遺言書作成が有用なんですね!

その通りです!
遺言書は絶対に作成しなければならない、というものではありませんが、作成することにより自分の意志を伝えることが出来ますし、相続トラブルの起きる可能性を下げることが出来ます。
また、遺言書には付言も書くことができます。

付言って何ですか?初めて聞く言葉なんですけど・・・。

あまり馴染みのない言葉かもしれませんね。
付言とは、法的な効果はないものの、遺言書に記載できるメッセージです。
例えば、「〇〇は献身的に介護してくれたので、多めに相続させることにしました。」などの相続割合の理由を書いたり、「お墓を建ててください。」や「お母さんは高齢なので、〇〇と△△は協力して、支えていってあげてください。」などの残された家族への依頼を書いたり、「今まで色々あった人生でしたが、満足でした。支えてくれた家族には言葉にできないほど感謝しています。」などの自分に関するメッセージや感謝の言葉などを書いたり出来ます。

それは良いですね!何を書いてもいいんですか?

付言として記載するには避けてほしいことが2つあります。
まず、遺言内容と矛盾する付言を書くことです。例えば、遺言内容で「〇〇に全財産を相続させる。」と記載しているところ、付言で「✕✕に相続させる銀行預金で、✕✕がちょっとでも幸せになることを願っています。」と記載すると、相続人からすると、「銀行預金は〇〇と✕✕のどっちが相続するの?」と戸惑ってしまいます。

確かにややこしくなりますね。〇〇と✕✕がお互いに銀行預金の相続を主張することになりかねませんね。

もう一つは、恨み言を書くことです。

え?恨み言ですか?

はい。推定相続人からひどい仕打ちを受けたことを根に持っている方は、付言で書きたいとおっしゃります。
しかし、推定相続人は改心しているかもしれませんし、他の相続人も良い気分にはならないでしょう。何より遺言書は相続人や家族だけが見るものではありません。銀行預金の払戻しや不動産の名義変更にも使用するため、銀行員や法務局の職員も目を通すことになります。
ですので、遺言書という最後のメッセージには、あまり過激なことを記載せずにいることをオススメしています。
ただ、どうしても許せないことがあったから書きたい、という場合は、遺言書ではなく手紙に記載すればいいと思います。

そうですね・・・。
私も親の遺言書に恨み言が書いてあったら嫌ですね。

さて、以上で遺言について大まかに説明させて頂きましたが、何かご質問はありますか?

遺言書を作成している人ってどのくらいいるんですか?

日本財団の調査によると、60歳~79歳で遺言書を作成している人の割合は3.5%のようです。
遺言書を作成したきっかけは、やはり自身の高齢化と相続トラブルを避けるため、というのが多いです。

かなり少ないんですね。

そうですね。遺言書に馴染みがないことや、そもそもあまり遺言についてご存じない方が多いでしょうね。
ですが、遺言書を作ることを前向きに検討している人も多くいらっしゃいます。
私たち専門家としては、そういった人たちの背中を押してあげること、色々な人に遺言の必要性をもっと知って頂くことを心がけたいですね。

もしかしたら、遺言で悩んでいる人は案外多いのかもしれませんね。
ありがとうございました!私も遺言書を作ってみたいと思います。
もしかしたら、また色々お尋ねするかもしれませんが・・・。

わかりました。私も出来る限りのサポートはさせて頂きます!
また分からないことがありましたら、何でも聞いてください!お応えできることは精一杯ご回答致します!