遺言書の種類

 「遺言書」という言葉を聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。遺言書は多くの人がご存じのとおり、遺言者が相続財産の分配方法などを記すもの、と考えてもらって問題ありません。

 民法では、法定相続人や法定相続分が定められており、遺言書が無ければ、基本的に法定相続人が法定相続分を目安に遺産分割をすることになります。
 しかし、遺言書があれば、法定相続人以外にも財産を渡すことが出来ますし、法定相続分とは異なる割合で相続させることも出来ます。ただし、一部の相続人には遺留分がありますので、気をつけなければなりません。詳細は「法定相続分と遺留分」をご覧下さい。

 遺言書を書いたけれど、後日に翻意することもあると思います。
 遺言書は撤回することが可能ですので、ご安心ください。詳しくは「遺言書の撤回について」をご覧ください。
 
 また、「遺言書を作成するために必要なもの」もご覧ください。

遺言書の種類

 遺言書の種類として、主に自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言があります。
 これらの遺言書を作成するためにはルールがありますので、生前に時間をとって準備することになりますが、緊急時の場合は急いで遺言書を作成しなければならないこともあります。
 緊急時のみ作成できる遺言書として、危急時遺言、伝染病隔離者の遺言、在船者の遺言、船舶遭難者の遺言があります。

 ここでは、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言について説明します。
 また、「遺言書を作成するメリット」もご参照ください。

自筆証書遺言

 自筆証書遺言を作成するためには、全文・日付・氏名を自署し、押印しなければなりません。

 全文は、「預金を〇〇に相続させる」「不動産を〇〇に遺贈する」などの文言です。
 日付は、遺言書の作成日で、必ず特定できる日付を記載しなければなりません。よって、「令和7年5月吉日」のような書き方は認められません。
 氏名は、基本的には住民票通りの氏名を記載します。本人が特定できるなら、芸名でも有効とした判例がありますが、住民票通りの氏名を記載しましょう。
 また、財産目録についてはパソコンで作成し、印刷したものでも構いません。ただし、その印刷した財産目録にも署名・押印が必要です。

 最も手軽に、安価で作成することが出来るメリットがありますが、要件を満たしていないと無効となってしまったり、紛失や偽造・変造などのリスクもあります。
 ただ、自筆証書遺言書保管制度を利用することにより、検認手続きが不要になったり、紛失や偽造・変造などのリスクをなくすことも出来ます。
 また、自筆証書遺言の文言修正方法についても、民法上で定められており、これに反する修正をすると、無効とされる恐れがあるので、注意が必要です。

公正証書遺言

 公正証書遺言は、自筆証書遺言と違い、公正証書で作成する遺言書です。公証人と証人2人以上が必要です。基本的に公証役場で作成することになりますが、追加で料金を支払えば自宅などでも作成することも出来ます。
 公証人が遺言者の口述を筆記して作成するため、遺言者は全文を書く必要はありませんが、署名押印は必要です。

 ①公証人が厳格に作成するため、遺言書が無効になる可能性が低いこと、②公証役場で原本が保管されるため、改ざんや紛失のリスクがないこと、③検認手続きが不要であるため、すぐに遺産分割手続きを進めることが出来ること、④多くの字を書くことが出来ない人でも作成出来ること、などのメリットがあります。
 一方、①公証人手数料などの費用がかかること、②自筆証書遺言のようにすぐに作成することが出来ないこと、③公証人や証人に遺言内容が知られること、などのデメリットもあります。
 なお、証人は誰でもなれるわけではなく、制限があります。詳細は「証人になることが出来ない人」をご参照ください。

公証人手数料

内容金額
目的の価格が100万円以下5,000円
目的の価格が100万円を超え、200万円以下7,000円
目的の価格が200万円を超え、500万円以下11,000円
目的の価格が500万円を超え、1,000万円以下17,000円
目的の価格が1,000万円を超え、3,000万円以下23,000円
目的の価格が3,000万円を超え、5,000万円以下29,000円
目的の価格が5,000万円を超え、1億円以下43,000円
目的の価格が1億円を超え、3億円以下43,000円に超過額5,000万円までごとに13,000円を加算した額
目的の価格が3億円を超え、10億円以下95,000円に超過額5,000万円までごとに11,000円を加算した額
目的の価格が10億円を超える場合249,000円に超過額5,000万円までごとに8,000円を加算した額
遺言加算(全体の財産が1億円以下の場合のみ)11,000円
遺言公正証書(正本・謄本)の交付250円/枚

※相続・遺贈を受ける人ごとにその財産の価格を算出して上記の表にあてはめ、それぞれの人ごとの手数料の合算が公証人手数料です。
 例えば、相続財産4,000万円のうち、配偶者2,000万円、子ども2人がそれぞれ1,000万円を相続する場合は、下記のようになります。
 23,000円(配偶者分)+34,000円(子ども2人分)+11,000円(遺言加算)=68,000円
 このほか、証人2人分の手数料(10,000円/人程度)も必要です。

秘密証書遺言

 秘密証書遺言は、公証人と証人2人が、秘密証書遺言であることを証するもので、署名押印さえ出来れば、パソコンで作成して印刷したものを秘密証書遺言として利用することが出来ます(もちろん、全文・日付も自署しても構いません)。
 公証人手数料は一律で11,000円です。

 ①遺言内容を秘密にしておくことが出来ること、②多くの字を書くことが出来ない人でもパソコンを使えば作成出来ること、などのメリットがある一方、①公証人手数料(秘密証書遺言の場合は、一律11,000円)などの費用がかかること、②自筆証書遺言のようにすぐに作成することが出来ないこと、などのデメリットもあります。
 ただ、秘密証書遺言を作成するメリットは多くはないため、秘密証書遺言を作成する人は年間でも100人程度しかいないと言われています。

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