融資審査で否決となる理由
融資を受けたいと思って金融機関窓口に行ったものの、融資を受けられなかった、ということはよくあります。もちろん、金融機関の融資審査の結果ですので文句は言えませんが、融資を受けられなかった原因を探すことも経営者の仕事のうちです。
金融機関の担当者に理由を聞くのも良いですが、多くの場合は「総合的判断により」と言われることでしょう。
融資審査が否決となる理由は下記が多いです。逆に言えば、これらをクリアしていると、融資審査に通りやすくなります。「融資審査のポイント」もご参照ください。
融資が否決となった場合は、「融資審査に通らなかったとき」もご参照ください。
返済可能性が低いこと
金融機関としては、融資したお金が利息と共に返済されることが絶対条件です。よって、融資申込人の案件内容と返済可能性はかなり重点的に審査します。
融資を申し込むということは、ほぼ確実に返済できるアテが必要です。
「この設備を購入することにより、毎月〇〇円が利益として残るので返済は可能です。」
「3か月後に売掛金の回収があるので、それまでのつなぎ資金を融資してほしい。」
「手元資金を厚くするために融資を受けたいです。毎月これだけのキャッシュフローが出ているので、資金繰り上でも返済に問題はありません。」
これらのような説明をしなければなりません。あとは、しっかりした事業計画書等があれば返済可能性が十分に見込めるでしょう。
一方、残念ながら返済できるアテもなく融資を申し込む事業者もいらっしゃいます。
「赤字経営が続いており、キャッシュフローはマイナスです。役員・従業員へのボーナスを支払いたいので、お金を貸してください。」
「脱サラして飲食店を経営したいです。山奥の隠れた名店を目指します。事業計画書はありませんが、家庭料理は5年以上経験があります。」
「自己資金ゼロで新規事業を始めたいです。ノウハウは持っていませんが、インターネットや書籍で調べながらやっていきます。」
これらの説明を受けると、金融機関としては不安を感じます。絶対に融資が下りない、というものではありませんが、非常にハードルが高いことが予想されます。
後者のように、返済可能性が低いと思われる案件については、融資を受けることが難しいでしょう。
しかし、もし本気で融資を受けたいとお思いなら、是非弊所にご相談ください(奈良県・大阪府・京都府の事業者に限ります)。
財務内容が悪いこと
上記の『返済可能性が低いこと』にも関係しますが、財務内容が悪いと融資が受けにくくなります。
まず思い浮かぶのが、当期純利益が赤字の場合でしょう。
赤字決算であるということは、増資などがない限り、前期よりも自己資本比率が悪化し、事業者の体力が減った、ということになります。このまま赤字決算を続けていると、いずれ債務超過に陥ることになります。
少し話がそれますが、金融機関は取引先(債務者)ごとにランク付けしています。そしてそのランクによって貸倒引当金を積んでいるのです。要するに、取引先(債務者)が低いランクになると引当金を積むことになり、金融機関の収益性が悪化するのです。よって、財務内容が悪い事業者や、今後悪化しそうな事業者には融資をしたがらないのです。
では、赤字決算なら絶対に融資を受けることが出来ないのか、というとそうではありません。赤字決算の理由によります。例えば、減価償却費を多額に計上した結果、赤字決算となった場合は、キャッシュフロー上は問題ないことがあるので、融資審査が通ることもあります。
また、固定資産除却損や売却損など、毎年計上されることが見込まれないものにより、一時的な赤字となった場合も融資審査が通ることがあります。
次に、債務超過の場合は財務内容が悪いと判断されがちです。
そもそも債務超過とは、全ての資産を現金化しても負債を返しきれない、ということです。債務超過額が少なければ、今後頑張れば何とかなるかもしれませんが、債務超過額が多額になると、その事業者の今後について考えていく必要が出てきます。
債務超過の場合も、融資を受けることが出来る場合があります。ただし、将来的に債務超過が解消される見込みがあることが前提です。
債務超過を解消する計画を作成する必要がありますが、慣れていないとこれがなかなか難しい作業になると思います。この計画には実現可能性があるかも審査のポイントになりますので、バラ色の計画書を作成しても融資審査には有利になりません。
また、事業者の資金繰りについても厳しくチェックしています。赤字決算でも資金繰り上で問題が無ければ融資審査で通る可能性がありますが、いずれ資金繰りがショートする見込みなら、否決という結果になるでしょう。
金融機関からすると、事業者に融資をしてすぐに資金繰りが上手くいかずに倒産されることは非常に困ったことです。
たとえどれだけ素晴らしい計画でも、資金繰りに余裕がなさすぎる場合は厳しい目で審査されることになります。
資金繰りについては、「資金繰りの大切さ」もご参照ください。
当職が金融機関で勤務していたときは、赤字決算の会社も債務超過の会社も融資をすることが出来ました(もちろん、取引先(債務者)や案件などによりますが…)。
もし不安があるのでしたら、是非ご相談ください!
担保や保証人が不適格であること
融資案件の内容によりますが、担保や保証人が不適格であることにより、融資審査で否決となることがあります。
金融機関としては、取引先(債務者)が返済できない場合に備えて担保を入れて貰ったり保証人をつけて貰ったりして融資します。そして、その担保や保証人が不適格の場合は融資が難しいとの回答をします。
例えば、僻地の山林を担保に入れようとしても、担保価値はほとんどないと判断されるでしょう。また、明らかに違反建築の物件を担保に入れようとしても、金融機関は難色を示します。なぜなら、万が一の場合の処分性がないからです。売れるかどうか、売れたとしても融資金を回収できる程度なのか、という問題がありますので、金融機関は担保不適格と判断します。
融資期間10年の案件で、90歳の母を保証人にするという申し出をしたとしても、金融機関は不適格と判断する可能性が高いです。なぜなら、保証人が高齢すぎて融資が完済するまで保証出来るか不透明、保証意思があるか分からないからです。
保証債務も相続されますので、保証人の家族についても説明しなければなりませんし、そもそも国としてはあまり無暗に保証人を取ることは控えましょう、としているので、このような保証人を入れる旨を申し出ても、不適格であるとの判断がなされるでしょう。
融資申込人が法令などに違反していること
思ったより多いのが、融資申込人が法令などに違反していることで、融資審査で否決になるケースです。
例えば、許認可が必要な事業をしているのに許認可を取得していない、税金や社会保険料などを支払うべき時期に支払っていない、そもそも違法な事業をしている、などがあります。
金融機関としては、法令を守らない事業者は、金融機関と取引先(債務者)との金銭貸借契約も守らないだろう、と考えます。
うっかり税金の支払いを忘れていた、なんてことはあるでしょう。しかし金融機関によっては厳しく審査されます。
今のうちに、事業内容や税金などの支払い状況を確認しておきましょう。
ちなみに、事業者の代表者や役員などの犯罪歴もチェックされる可能性がありますので、私生活も気を付ける必要があります。
融資申込人や案件の関係者に反社会的勢力等が絡んでいること
金融機関としては、反社会的勢力の廃除が絶対使命です。よって、融資申込人や案件の関係者を全て調べ、反社会的勢力等に該当する人がいないかをチェックしています。
もし反社会的勢力等に該当している人がいれば、融資を受けることは非常に難しいと考えたほうが良いです。そして、金融機関の担当者は、誰が反社会的勢力等に該当しているかを教えないでしょう。
今のうちに出来る対策としては、怪しい人物を会社に近づけさせない(良く分からないコンサルタントなど)ことや、新規取引先について色々調べてから取引を開始すること、既存取引先について調べなおし、もし不芳情報があれば取引を解消するなどがあります。
まとめ
・融資審査で否決となる理由は様々です。場合によっては、理由を教えてくれないこともあります。
・融資を受ける必要性と、自社の事業内容や財務内容、案件などを再度確認してみましょう。
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